夕立の祝祭

箏合奏のための(2024-2025)

演奏時間/約8分50秒

委嘱/和歌山県立橋本高等学校邦楽部

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子どもの頃、夕立が嫌だった。雷は怖いし、遊ぶのを邪魔されるような気がした。
その嫌な気持ちはいつ頃小さくなっていったんだろう。

夕立はこの世界が一変する出来事だと思う。雷雨が景色を包み込み、その場所を自分たちが知らない景色へと変貌させる。そして、暑気が払われ、夕暮れの涼しさが残る。ひぐらしの鳴き声、ジリジリとした暑さの旧世界的な余韻。さっきまでいた世界とは違う新しい場所だ。

漫然と続くと思った世界が揺り動かされ、にわかに訪れる雨の世界。それは泡沫で、とこしえの祝祭。恵みの雨。渇きを癒す歓喜のスコール。路地裏を駆け抜け、雨を寿ぎ乱舞する子どもたち。それは祝福の雨となる。

八木重吉はかつて、「雨というもののそばにしゃがんで 雨のすることをみていたい」と詠った。この世界を包み込んでしまう箏の雨。様々な表情を見せながら、訪れて、去ってゆく祝祭の時。

夕立がくると、この世界が溶けて変質する気がする。洗い流される境界。けぶりゆく世界。ここではないどこかへ。あの時の雨の中へ。交錯する記憶の彼方へ―

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初演:2025年5月18日(日) 和歌山県立橋本高等学校邦楽部
第3回日本国際芸術祭 主催者企画 全国自治体 EXPO PLL Talks 特別プログラム
高校生による未来共創・日本伝統芸能EXPO (2025年日本国際博覧会 会場 ポップアップステージ北)

映像:令和7年度 和歌山県高等学校総合文化祭邦楽部門発表会
令和7年度8月6日 和歌山城ホール 大ホール
主催/和歌山県高等学校文化連盟・和歌山県教育委員会